精神科医として見る「エヴァ」は、きわめて「境界例」的な作品である


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624 :名無し物書き@推敲中?:2011/07/31(日) 22:08:35.31 ID:?

精神科医として見る「エヴァ」は、きわめて「境界例」的な作品である。

庵野監督のインタビューには「気違い」「分裂病」などの言葉がよく出てくる。
ところが「エヴァ」の世界は、およそ分裂病的ではない。
分裂病」とは何よりもまず、まともなコトバや共感が通じなくなる事態のことだ。
ところが「エヴァ」という作品は、謎と仕掛けに満ちているにも関わらず、むしろ過剰なまでに「判り」やすい。
この判りやすさこそが「エヴァ」の最大の魅力であり、見ると語らずにはいられなくなるのはこのためだ。

庵野氏によれば「分裂病が判るのは分裂病だけとのことだが、この表現はむしろ「境界例」にこそよく当てはまる。
境界例」は「ボーダーライン」「境界性人格障害」などとも呼ばれ、分裂病神経症の境界線上の病気というのが本来の意味だ。
不安定な気分と対人関係、手首自傷などの激しい「行動化」が特徴で、いつも自分の空っぽさに悩まされている。
だから孤独に耐えられず、他人との関わりを求めるあまり、はた迷惑な行動に走る。
そのつもりがないのに周囲を挑発せずにはいられない。
またそれが本人の魅力でもあるため、まわりの人たちも容易に巻き込まれる。
彼らは自らの中心が空虚であるというイメージに敏感で、空虚の埋め合わせに
他人のイメージを参照・引用−つまり「同一化」−しながら自分を支えようとする。

そして「境界例」の孤独と空虚は、われわれ自身のそれと本質的には同じものだ。




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