林芙美子「私はお釈迦様に恋をしました」


林芙美子 巴里の恋―巴里の小遣ひ帳、一九三二年の日記、夫への手紙 (中公文庫)


964 :吾輩は名無しである2011/12/10(土) 01:55:24.94

お釈迦様

私はお釈迦様に恋をしました 仄かに冷たい唇に接吻すれば
おおもったいない程の 痺れ心になりまする。
ピンからキリまで もったいなさに なだらかな血潮が逆流しまする
蓮華に坐した 心にくいまで落ち着き払った その男ぶりに
すっかり私の魂はつられてしましました。
お釈迦様 あんまりつれないでござりませぬか!
蜂の巣のようにこわれた 私の心臓の中に お釈迦様
ナムアミダブツの無常を悟すのが 能でもありますまいに
その男ぶりで炎の様な私の胸に 飛びこんで下さりませ
俗世に汚れた この女の首を 死ぬ程抱き締めて下さりませ。

                『林芙美子詩集』より







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