共作ユニット・大森兄弟の執筆手法


犬はいつも足元にいて


大森兄弟:芥川賞候補で注目 共作で魂を描けるか
http://mainichi.jp/enta/art/news/20100121ddm014040129000c.html

大森兄弟の執筆手法はユニークだ。今回の候補作だと、まず兄が400字詰め原稿用紙2、3枚でおおよその筋を書いた。それを弟にメールで送ると、弟が全体に書き加えて10枚ぐらいにする。メールのやり取りとともに、2人とも横浜市内に住んでいるので、大事な局面については弟の自宅で会って「こんな感じにしようか」と相談する。その後はまた、1人でパソコンに向かう。役割分担はなく、やり取りを繰り返し、162枚の作品に仕上げた。

砂の女 (新潮文庫)相手の書いた部分は無断で削除しない。イメージを共有できるのが兄弟の利点で、「公園」といえば、2人は子供のころに遊んだ同じ公園を思い描いている。だから、3人目の書き手を加えるつもりはない。好きな作家は2人とも安部公房。さらに兄は大江健三郎さん、村上春樹さん。弟は遠藤周作三島由紀夫らの名前を挙げた。

確かにユニークだなぁ。特に役割分担がないってところなんて「え!」って思っちゃうよね。共作とは言うものの、創作作法的には一人の人間がやるのとあまり変わらないのかな? ちょっと効率が悪そうな感じは否めないんだけど、彼らにとってはそれが最良のやり方なのでしょう。


芥川賞選考委員の池澤夏樹さんによると、1人の委員が積極的に推したが大勢にならなかった。共作については、文学的に容認できるかどうか、議論になった。


池澤さんは「小説というのはやっぱり1人の人間が書くものだ」という意見と「まず、作品がある。作品をみるのが選考(で作者が誰かというのは2次的な問題)」という声と両方があったという。


インターネットの広がりで、共作は随分とやりやすくなった。そこに可能性を感じるかという質問に対し、池澤さんは「純文学とは一つの魂を描くもの。それが持ち寄りでできるのだろうか。頭から否定はしないけれど、もし、できるのなら、いい作品を読んでみたい」と期待とも挑発ともとれる発言をした。

この大森兄弟みたいな感じではなく、ほんとうにシステマティックに創られた小説というものを読んでみたい気がするね。それでちゃんと通用するくらいのレベルの物語が創れるのかどうか、そっちの方が興味あるかな。アメリカで言うところの、ハリウッド式シナリオライティングの日本版みたいなやつを希望。


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