今年読んだベスト本 2011

色々とネットを徘徊していると、“今年読んだ本ベスト10”などなど目にすることが多くなり、あぁ今年も終わりだねなんて物思いにふけっていたんですが、ふと「あ、僕もまとめなければ」とようやく思い立ち記事を作成した次第です。


以下、これまでのベスト本。


去年の記事を読んでみると読んだ総数が減ったと書いているんだけど、今年はさらに減ってしまっている事実。年々読書量が減っていることに多少の危機感と、そんなのどうでもいいじゃねぇかというお座なり感がない交ぜになった塩梅で来年も楽しい読書をしていきたいと思います。


ではでは、とりあえず10作品ほど選んでみたのでどうぞよろしく。


ちなみに、今年読んだ本というだけで、今年発売された本ではないのであしからず。それから、ランキングとかではないので並び順には意味はありません。



 胸糞悪いながらも、えも言われぬ面白さ 「シンセミア」


シンセミア〈1〉 (朝日文庫) シンセミア〈2〉 (朝日文庫) シンセミア〈3〉 (朝日文庫) シンセミア〈4〉 (朝日文庫)


いやぁ〜濃厚。本書にはものすごい欲望の海が渦巻いている、気持ち悪くなってくるくらいに。ほんとにドロドロ、そうとしか言いようがない。それでいて、ほんとドス黒いんだよな。なんか抽象的な言葉ばかり並べてしまうんだけど、終盤はまさにタイトル通りなトリップしてしまったような感じだった。


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 真実が一番残酷 「新世界より」


新世界より(上) (講談社文庫) 新世界より(中) (講談社文庫) 新世界より(下) (講談社文庫)


本書は、少年少女が世界の秘密を発見してしまいなんやかんやするパターンの物語。序盤から驚かされることが多くてワクワク感がほんとすごかった。正直このテンションを最後まで保てるのか? という不安を持ちつつ読み進めたんだけどそれも杞憂にすぎず、中盤から濃くなっていくばかりの緊張感に翻弄されるしかなかったわけで…。


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 自由に物語を紡いでる感じが滲み出ている 「ディスコ探偵水曜日」


ディスコ探偵水曜日〈上〉 (新潮文庫) ディスコ探偵水曜日〈中〉 (新潮文庫) ディスコ探偵水曜日〈下〉 (新潮文庫)


かなり人を選ぶ作品なのだろうけど、なんか色々スゴイとしか言いようがなかった。様々な事象が複雑に絡み合っていて、何回驚かされたかわかららない。どんでん返しも多かったし、最後まで読んでみて「あれも伏線だったのか」と気付くことも多々ある。すぐにでも読み返したいという衝動にかられてしまったけど、長い作品なので気持ちを押しとどめました。


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 舞台に上がるまでにもドラマがある 「チョコレートコスモス」


チョコレートコスモス (角川文庫)


自分の知らない世界を垣間見るっていうのは、なんて面白いことなんだろう。本書では舞台を演じる役者、戯曲を書く劇作家、それら演劇人たちの生態が非常に興味深く描かれている。演劇人視点から観た演劇や共演者同士の駆け引き、小さな劇団の旗揚げまでの流れなど、舞台の上だけでなくそこに上がるまでにもやっぱりドラマがあるわけだ。


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  • ラス・マンチャス通信

 あえて説明しない 「ラス・マンチャス通信」


ラス・マンチャス通信 (角川文庫)


なんという独特な物語。坦々と(ちょっと突飛な)日常が語られているのかと思いきや、いつの間にか裏の闇の部分に連れて行かれてしまっている、というような読書感覚。それがあまりにも唐突だったりするので思考が付いていかず、ついポカーンとしてしまうんだけど、それらに一切説明は無し。解釈は全て読者に委ねられる、そんな作品。


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 まさに歴史証言の書 「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」


嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)


60〜80年代のチェコソ連などの政治状況や、90年代のユーゴ紛争のことなどが描かれていて、なかなか興味深い内容。なんというか、まさに“歴史証言の書”と言っていいのかもしれない。学校の教科書等では絶対に読むことができないような、その時を生きた人の生の声が著者の体験とともにこれでもかと詰まっている。かなり読み応えアリです。


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  • シャルビューク夫人の肖像

 常に薄気味悪い感じが付きまとう 「シャルビューク夫人の肖像」


シャルビューク夫人の肖像 (RHブックス・プラス)


「姿を見ずに、肖像画を描いてほしい」という、とある夫人からの依頼。その夫人が語るファンタジックで濃ゆい子供時代の話。そして、夫と執事の奇怪な行動。奇病の蔓延。これらが巧妙に絡まり合い謎が謎を呼ぶ感じでなかなか読ませます。何というか、常に薄気味悪い感じが付きまとっている状態で読み進める。そういうイメージ。


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  • 不滅

 精神的な監視社会 「不滅」


不滅 (集英社文庫)


本書には著者もさることながら、著名人であるゲーテも出てくるし、それらと対比されるかのように創作された人物も登場。それぞれの物語が絶妙に絡まり合い、交じり合い方がほんとにスゴかった。現実と虚構の混じり方があまりにも自然なので、創作された人物もまるでほんとに生命を持っているかのごとくリアルに感じられるところに驚愕。


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 なんだかよく分からない、けれど…「ハルシオン・ランチ 1、2巻」


ハルシオン・ランチ 1 (アフタヌーンKC) ハルシオン・ランチ(2) <完> (アフタヌーンKC)


ギャグマンガって世間ズレした人物と、それらを軌道修正するナビ役2人がいれば成立するものだと思うんだけど、本書はとにかくズレた人物がこれでもかって出てくるので、“なんだかよく分からない”“ぶっ飛び過ぎ”っていう評価に僕の中ではどうしてもなってしまうものの、それでもたいへん面白かった。


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  • 冒険エレキテ島 1巻

 内容そっちのけで絵に見入る 「冒険エレキテ島 1巻」


冒険エレキテ島(1) (KCデラックス)


何ていうか、ほんとすばらしく絵が上手い。人物の動きは少ないし、台詞も少なめ、展開も割とあっさりしている。にも関わらず絵に魅力があるから、それだけで色々と想像を膨らませられる力がそこにはある気がするね。読み手の方で自然と動きを補完している感じかな。あと、続きはいつ出るのか、ほんとに出るのか。そんな危ういところも惹きつけますな。