佐藤優と中村うさぎの対談


聖書を語る―宗教は震災後の日本を救えるか


引用元:http://toro.2ch.net/test/read.cgi/books/1339200470/

776 :無名草子さん:2013/03/19(火) 01:06:25.17
佐藤スレで米原さんばかり語るのもアレなので、最近読んだ佐藤本。

「聖書を語る」(文芸春秋

佐藤さんと中村うさぎの対談集。これ、予想に反してかなり面白いw
特に予定説に関する議論↓。

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中村「(中略)そりゃそうでしょ!自分のやったことは、自分の責任じゃん!
当たり前じゃないの、それ?」

佐藤「私の属するカルヴァン派は、その対極にあるんですよ。
人間は生まれる前から、天国にあるノートに、選ばれる人救われる人の
名前が載っている。この世でどんな努力をしようと、その結果は変わらないんです。」

中村 「何それ?そんなインチキくさいこと信じないよ、私は(笑)!天国にノート
なんて、ないから!佐藤さんは、そんなこと、マジで信じてるの?」

佐藤 「信じてますよ。」

中村 「いやいや、ノートって、あなた・・・(笑)。つまりさぁ、そのノートに名前が
書かれていない人は、どんなに真面目に生きたって天国に行けないってことでしょ?
そりゃまた、ひどい話じゃないか!救われる人がサイトyから決まってるなら、
そうじゃない人は何のために生まれてくるの?」

佐藤 「そんなことは神のみが知っている話で、人間に、その理由はわからないんです。」

中村 「だってさ、そんなの全然、フェアじゃないじゃん!もし神がいるとしてですよ、
私はあんまり神様の存在を信じてないけど、それでもいるとしてですよ、
その神はあらゆる人間に対してフェアであるべきじゃないの?だって、神は『審判者』
でしょ?審判がフェアじゃなくてどうするの?」



777 :無名草子さん:2013/03/19(火) 01:14:09.11
佐藤 「そう、神様は人間の基準からするとフェアじゃない。私の場合は、
裁判所も、神様も、もともとフェアじゃないと刷り込まれている。
だから、そのこと自体は何とも思わない。」

中村 「ホント?何とも思わないわけないと思うんだけどな。だって、
どんな努力しても報われないんなら、努力はおろか、生きることそのものも
無駄ってことじゃん!そんな無意味な人生、絶対に納得できるはずないって
・・・あっ、もしかして佐藤さんは、自分の名前は天国のノートに記載されてる
って思ってるんだねっ?自分は選ばれてるって自信があるから、泰然として
られるんだ!そうでしょ!」

佐藤 「よくわからないけど、そう思い込むしかない。逮捕されて世にもひどい
目に遭ったけど、最後は大丈夫だと、俺にはむかってくるというのは、きっと
悪魔の手先で、こいつらが選ばれていないことは確かだ。こんなふうに思って
獄中に座っているから、全然気にならないんです。」

中村 「俺は選ばれているから大丈夫、俺の敵はみんな悪魔の手先だ、と。
そりゃまた、ずいぶんと傲慢な考えじゃないか。」

佐藤 「いや、そう、傲慢そのものなんですよ。『この世で力を握っている
悪魔の手先どもにどう大興するか』ということばかり考えているわけです。
私は外務官僚に対しては、常に『裁きの神』ですからね。」

中村 「おお、『裁きの神』!人を裁くとは、ますます傲慢な思想だなぁ。」

佐藤 「そういう批判が出てくるのは、うさぎさんがバプテスト派だからですよ。」

中村 「宗派の問題なの?だってね、しつこいようだけど、その理屈は納得
できないよ。すべてが神の計画で、人間の努力なんてこれっぽっちも神の決めた
ことを変えられないんなら、人は何のために生きてるんだって話しだよ。」



778 :無名草子さん:2013/03/19(火) 01:23:56.75
中村 「たとえば自分の意思で犯した罪なら、それは自己責任だからさ、
悔い改めて罪を償えばやり直すチャンスもあるはずでしょ。でも、その罪すらも
神の計画だと言われた日にゃ、罪を犯そうが犯すまいが、悔い改めようが
悔い改めまいが、我々の意思や行動には一切意味がないことになる。
こうやっていろいろ悩んだり苦しんだり、誘惑に負けまいと頑張ったり、
負けてしまったり・・・そうやって生きていくこに何の意味もないとしたら、
私なんか生きていく気がしなくなるよ!私がキリスト教的な運命論に批判的
なのは、そこなんだよ。それじゃあ、人は何のために生きてるの?」

佐藤 「その質問は正しいんです。それはピューリタニズムの発想で、
バプテスト派的なんだと思う。」

中村 「じゃあ、カルヴァン派は、そういう疑問を持たないの?なんで持たないで
いられるの?」

佐藤 「その質問にあえて答えるならば、子供の頃からの刷り込みです。
人間はどのようにして神様のために生きるかということが、天上においてあらかじめ
決まっていると思っているから。バプテスト派はどちらかという、禅に近い要素がある。
自力本願。それに対してカルヴァン派絶対他力だから、浄土真宗に近いわけ。
他力本願っていうと適当な感じがするけど、ほんとうは、すべての努力をして
全力をあげて訓練しても最後の勝ち負けは、これは運だ。どんなに努力をして尽くしても、
自力で自分が勝てるなという発想なんですね。」

中村 「ふーん、すでに勝ち負けが決まっているのに、なぜ努力する必要がるのかな。」

佐藤 「いや、そういう風には考えない。努力するのは人間として当たり前のことで
あって、努力したから成功するというような発想自体を人間の思い上がりと考えます。
カルヴァン派の特徴は、試練に対して強いことです。選ばれているに違いないから、
目前の試練を乗り越えようとするわけですよ。競争にも強い。絶対にあきらめないから。
欧米で資本主義がこんなに発達したのは、実はカルヴァン派プロテスタント
主流だからでもあるんです。」



779 :無名草子さん:2013/03/19(火) 01:29:41.49
中村 「努力で何とかしようとするのは人間の思い上がり、かぁ。面白いね。
私の目には『自分は神に選ばれている』って信じてるカルヴァン派は傲慢に
見えるけど、カルヴァン派から見ると『人間は努力すれば報われる』と
信じる私の方が傲慢なんだね。でもさ、人生ってものがあらかじめ勝者の
決まっているゲームだってぇのは、多くの貧民たちが絶望する論理じゃん。」

佐藤 「まあ、カルヴァン派は社会の支配層の中の主流派の論理では
ありますね。」

中村 「佐藤さんが外務省に対してあきらめないのは、カルヴァン派だから
なのね。カルヴァン派って、基本的に楽天家なのかなぁ。だって、悲観的な
人間だったら、どうせ自分は選ばれてないんだろういう方向に考えていくよ。
間違いなく。現に私はそう考えちゃうタイプかも・・・(後略)」

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「私のマルクス」の中の、佐藤さんと友人との会話を、もっとくだけた感じに
すると、上の↑ような会話になるw 引用が長くなったが、意外と面白い本
なので是非皆さん読んで欲しい。






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