米原万里による佐藤優作品の論評
引用元:http://toro.2ch.net/test/read.cgi/books/1339200470/
米原万里著「打ちのめされるようなすごい本」を読了。
佐藤さんが「ぼくらの頭脳の鍛え方」(P.278)の中で、
「故・米原万里氏による優れた書評集。米原氏は『十九世紀神学の父』と
呼ばれるシュライエルマッハーのように『直感と感情』で読んでいる。
そして、それぞれの本が描き出す宇宙を米原氏の言葉で再解釈している。
本書を読めば、活字から生命を取り出す秘儀が身につく」と、
ある意味「ベタ誉め」した本だ。
一方、米原さんは「打ちのめされるようなすごい本」の中で、佐藤さんの
「国家の罠」「国家の自縛」に関して論評しているのだが、これが面白い!
以下、抜粋する。
「ムネオ疑惑に連座して逮捕され、現在控訴中の元外務省情報分析官、
佐藤優が事件の舞台裏を綴った『国家の罠』の密度の濃さと面白さに、
『外務省は途轍もなく優秀な情報分析官を失った。おかげで読書界は類い
稀なる作家を得た』と某新聞で書評した私は、もちろん佐藤の次作を
今か今かと待ちかまえていた。」
(中略)
「その『国家の自縛』は・・・(中略)・・・突っ込み不足の箇所が多々あるものの、
知ったかぶりや借り物の見解は一切なく、語られる言葉一つ一つに佐藤独自の
思考回路を通過した痕跡が濃厚にある。驚くべき博覧強記の一端が垣間見られ、
随所で笑わせる余裕とサービス精神を含めて、佐藤の作家としての前途を
楽しみにさせてくれるのと同時に、佐藤の限界というか佐藤自身の『自縛』をも
顕在化させている。」
(中略)
「外務省には絶対に戻らないと言い切る佐藤が『現職の内閣総理大臣を
全力でサポートしていくっていうのが役人の仕事ですし、それが国のカネで
育成された専門家としてのあり方なんですよ。そのモラルを崩したくない』と
述べて、小泉批判を自重し、靖国参拝からイラク派兵までを正当化しようと
するくだりは、上滑りで説得力がない。」
(中略)
「国=現政権と自動的に受け止める役人的思考回路が自由闊達な佐藤の
思考を、そこの所だけ停止させていて勿体ない。佐藤は首相がヒトラーでも
忠実に仕えるつもりなのか。また、国家権力に寄り添って生きてきた惰性
なのか、権力者や強者の論理にとらわれすぎていて、国内的にも国際的にも
弱者や反体制派の視点が完全に欠落している。公僕は、まず誰よりも国民
の僕で、『国のカネ』は国民の税金であり、憲法と現法体系に忠実であるべきだ。
それに、作家は自分の見解を率直に偽りなく語るべきで、権力者におもねったり
遠慮したりのでは、言葉が力を失う。それとも、佐藤は、まだ役人生活への
未練があるのか。」
以上の米原さんの指摘は、佐藤スレでの佐藤さんに対する批判的な
コメントのこれ以上なく分りやすい要約と言っても良い。
佐藤さんの様々な本で指摘される米原さんに関するエピソード、
そして米原さんの佐藤さんに関する評論。佐藤さんが自著で挙げる
ソ連・ロシアに関する様々なエピソードのうち幾つかの元ネタは、
米原さんにあると思われる。そして、2人が知的な刺激を与え合って
いた様子が偲ばれる。
なお、同じく米原さんの「ロシアは今日も荒れ模様」(講談社文庫)の
巻末解説を書いているのが、あの袴田茂樹・青山大学教授である。
佐藤さんがボロクソに言ってるあの人だw 「ロシア語業界」というのは
本当に狭いのだな、と感じる。英語以外に第二外国語やるなら、
もしかしてロシア語かも?などと妄想。
国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて
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