今年読んだベスト本 2013

今年もただただ自分でなんとなく読んでみたいなと思った本を手に取ってきたわけですが、そんな中でも「これは!」と思うものがいくつか有ったりするわけで、そういう出会いというものが何よりの至福だったりします。


非常に効率の悪い読み方だし、当然ながら有名な本好きの方が「素晴らしい!」と言っているものとかを追っていく方がいいのだろうけど、たまたま自分の前に飛び込んで来たものを手に取るというスタンスの方が個人的には好きなのです、やはり。


ま、どちらにしろ自己満足には変わりはなく、楽な気持ちでこらからも読書を楽しんでいきたいと思います。壁投げ本に出会おうとも……。


以下、これまでのベスト本。


そんなわけで、今年もとりあえず10作品ほど選んでみたのでどうぞよろしく。


ちなみに、今年読んだ本というだけで、今年発売された本ではないのであしからず。それから、ランキングとかではないので並び順には意味はありません。




篠田節子弥勒

 自分の価値観が揺らいでしまう 「弥勒」


弥勒 (講談社文庫)


なんだか生きる根源というものを思い知らされた、そんな作品だったように思う。


国の指導者がユートピアを目指すものの、それがどんどんディストピアになっていくという、その変遷が何より怖ろしい。文化・文明の衰退、その原因が政治にあって、どんどん物質的な豊かさが無くなっていき、原始的に立ち返っていく絶望感。まさに地獄としか言いようがない。




三島由紀夫豊饒の海

 禁を犯し法を超える 「春の雪―豊饒の海・第一巻」
 思想信条からくる無垢な犯罪 「奔馬―豊饒の海・第二巻」
 ジン・ジャンって結局なんだったの?「暁の寺―豊饒の海・第三巻」
 自尊心を打ち砕く 「天人五衰―豊饒の海・第四巻」


春の雪―豊饒の海・第一巻 (新潮文庫)奔馬―豊饒の海・第二巻 (新潮文庫)暁の寺―豊饒の海・第三巻 (新潮文庫)天人五衰―豊饒の海・第四巻 (新潮文庫)


美しくも非常に切ない物語。美しさの意味合いというものがそれぞれの巻によって違うのだけど、特に「春の雪」と「奔馬」の主人公というのは、ある意味真っ直ぐ過ぎて痛々しいくらいだったように思う。


あと、本シリーズ・語り部(本多)の人物像の変遷というのも読むべきところなのかも。




三島由紀夫 『美しい星』

 愛すべきは人間の性質 「美しい星」


美しい星 (新潮文庫)


宇宙人らによる論戦がとにかく凄かった。目覚めるまでは地球人だったにも関わらず、宇宙人として地球の文化等を客観的に論じており、滑稽であり皮肉がきいていて非常に興味深かったように思う。


おまけに、彼らの思想というものも非常に的を射ており、ほんと人類の存在の根源を問われている気がして、「人間って何なんだろうか……生まれてきてごめんなさい」と思えてくるから大変です。




筒井康隆 『旅のラゴス

 印象的なエピソードの羅列 「旅のラゴス」


旅のラゴス (新潮文庫)


読み終わってから「まだ読みたい!」と久々に思えた作品。実際200ページ余りという短い作品なので、あっという間に読めてしまうわけだけど、かなりこの世界観に引き込まれてしまった。


まあ描かれている内容というのはそこまで目新しくないのかもしれないけれど、文章の上手さから結構感情移入しやすかったように思う。連作短編ということで印象的なエピソードの羅列、波乱万丈の旅、そんな感じ。




ミハイル・A・ブルガーコフ巨匠とマルガリータ

 全員が“狂人”に思えてくる 「巨匠とマルガリータ」


巨匠とマルガリータ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)


なんとも不可思議な物語。これがロシア的なファンタジーとでも言うんだろうか、非常に荒唐無稽、しかし惹きつけてやまない要素がたくさん散りばめられていた印象。


とにかくキャラ造詣は秀逸。一体彼らは何者? 目的は何? てな感じで、登場人物全てにクエスチョンマークを抱かずにはいられない。読めば読むほど、全員が“狂人”に思えてくるから不思議なものだ。




若杉冽 『原発ホワイトアウト

 報道の全てが疑わしく思えてくる 「原発ホワイトアウト」


原発ホワイトアウト


現役官僚による告発本の体を成している小説ということで、なかなか考えさせられる事象が多いこと多いこと。様々な各種業界間の癒着というものを主に読まされるわけだから、怒りを覚えるのは当然の事で、最早それを通り越して気持ち悪ささえ感じてしまう。


ドロドロとした暗部を無理矢理覗かされている感覚にもなってくるし、各種メディアすべての報道というものを何も信じられなくなってくるから大変です。




呉智英 『危険な思想家』

 ここまで言っちゃっていいの?「危険な思想家」


危険な思想家 (双葉文庫)


書店でたまたま見付けてタイトル買いしてみたわけだけど、なんかスゴイものを読んだ、そんな読後感。何がスゴイかって「ここまで言っちゃっていいの?」と、思わず心配になってくるところだろうか。


安全な思想が我々を呪縛している現在、時代が要請しているのは“危険な思想”なのではないか、という論調から始まる本書。著者が著名な論客の発言に対して、バッタバッタと斬り捨てて論破していっている様がなかなか小気味良い。しかし、人権や民族差別論者とかにも噛み付いているので、その辺がとにかく危険な感じがしてしまわずにはいられない。




川上未映子 『六つの星星 川上未映子対話集』

 濃くて重い対話 「六つの星星 川上未映子対話集」


六つの星星 川上未映子対話集 (文春文庫)


のっけから濃くて重い対話をしているものだ。身体的、精神的な事柄からセクシャルな話題までバシバシ出てくるので、どんどん心を持っていかれる感覚にもなってくる。


対話の取っ掛かりは川上さんの小説の内容だったりするんだけど、次第に対話相手が語りたいことばかりにシフトしている感じかな。でも川上さんは、そういった対話相手の意見にそのまま迎合することなく、「それは違うんじゃない?」とちゃんと自分の意見もいえるところが素晴らしい。




チャールズ・R・クロス 『ジミ・ヘンドリクス 鏡ばりの部屋』

 人生で大切なことは半分ジミヘンに教わった 「ジミ・ヘンドリクス 鏡ばりの部屋」


ジミ・ヘンドリクス 鏡ばりの部屋 (P‐Vine BOOKs)


なんだか定期的にジミヘンを聴きたくなることがあって、各種アルバムをヘビロテすることがしばしばあるわけなんだけど、そこでふいに彼の伝記が読みたくなり本書を手に取ってみた。


今回は、スーパースターの生き方に何かを教わろう、教わってやろうじゃないかという観点でもって本書を読み始めてみたので、結構面白く読むことができたように思う。




大友克洋AKIRA

 終盤は翻弄されまくり 「AKIRA」


AKIRA(1) (KCデラックス 11) AKIRA(2) (KCデラックス 12) AKIRA(3) (KCデラックス 13)

AKIRA(4) (KCデラックス 14) AKIRA(5) (KCデラックス 166) AKIRA(6) (KCデラックス 339)


結構古い作品ということもあってこれまで完全に敬遠していたんだけど、2020年・東京オリンピックを予言していたということで興味を持って読んでみることにしてみた。


何というか、序盤から謎が多過ぎてモヤモヤ来ちゃうものの、かなりテンポよくストーリーが進むのでなかなか面白い。大友さん作ということで当然ながら絵も上手いし、今読んでも古さを感じないというのも良いですな。






最後におまけでゲームを1本。なんだかんだでハマりました。


ダンガンロンパ1・2 Reload

 「ダンガンロンパ1・2 Reload」ひとまず“1”をクリアしたよ、なんだかんだでハマりました
 「ダンガンロンパ1・2 Reload」引き続き“2”をクリアしたよ、狛枝凪斗というキャラに圧倒されてしまった


ダンガンロンパ1・2 Reload