赤塚不二夫「その日もぼくたち悪ガキは5、6人で城跡へ遊びに行った。そこで虚無僧に出会ったのである」


これでいいのだ―赤塚不二夫自叙伝 (文春文庫)


引用元:http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/rcomic/1309161235/

327 :愛蔵版名無しさん:2012/10/04(木) 23:19:24.83 id:knsFG6XQ
その日もぼくたち悪ガキは5、6人で城跡へ遊びに行った。そこで虚無僧に出会ったのである。

<中略>

近くにいたぼくらを手招きして、
「何か食べるものを買ってきてくれないか。お前たちも好きなものを買ってくるがいい」
そう言ってお金を渡した。

<中略>

「このお金全部持って、どこかで買い食いしようじゃないか」
どうせあの虚無僧は土地の者ではない。追いかけてはこれない、という計算が誰もがした。
衆議一決かと思ったとき、一人だけこの考えに同意しないやつがいた。
「ぼくはそういうの、いやだ」

この意見が一人一人の気持を変えた。猫ババすることに賛成はしたものの、
やはりみんなはなんとなく後ろめたかったのである。結局、言われた通りに買い物をし、
虚無僧のもとへもどった。

そこで虚無僧は初めて深編み笠を脱いだ。そしてこう言ったのである。




330 :愛蔵版名無しさん:2012/10/05(金) 21:41:50.15 id:QJ21XvpY
>>327の続き

「私にはお前たちの気持ちがわかっていた。帰ってこないつもりだっただろう。
でも思いなおしてもどってきた。その心があるうちは大丈夫だ。その心を絶対忘れるんじゃないぞ」

この話を聞いてぼくはすごく感激した。当時、こんな話を子供にしてくれる大人なんていなかった。

<中略>

それだけに虚無僧の話はすごく心にしみた。「ああ、もどってよかった!」
ぼくもそう思い、心が洗われたような気がした。一人だけみんなの意見に反対した、勇敢な友人のおかげだ。

赤塚不二夫自叙伝 これでいいのだ、より抜粋)


名俳優だった大滝秀治さんの御冥福をお祈りいたします。





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