三島由紀夫「石原慎太郎氏は本当に走つてゐるといふよりは、半ばすべつてゐるのである」


橋下徹vs石原慎太郎―二人は国を救えるか!?名宰相待望論52の魅力


引用元:http://toro.2ch.net/test/read.cgi/book/1331565227/

428 :吾輩は名無しである:2012/11/13(火) 13:07:56.05
赤ッ面の敵役があまり石原氏をボロクソに言ふから、江戸ッ子の判官びいきで、ついつい氏の肩を持つ
やうになるのだが、あれほどボロクソに言はれなかつたら、却つて私が赤ッ面の役に回つてゐたかも
しれない。その点私の言ひ草は相対的であり、また、現象論的であることを御承知ねがひたい。 従つて、
ひいきとしては、氏の一勝負一勝負が一々気になるが、今まででは「処刑の部屋」が一等いい作品で、
中にはずいぶん香ばしくないものもある。
香ばしくないどころか、呆れ返るものもある。しかし、ひいきのたのしみはいつも不安を与へられることであり、
はじめから安定した、まちがひのない作家といふものに私は興味がない。
(中略)
今のところ、氏は本当に走つてゐるといふよりは、半ばすべつてゐるのである。すべることは走るより楽だし、
疲労も軽い。しかし自分がどこへ飛んで行つてしまふかわからぬ危険もある。やつぱり着実に走つて、
自分の脚が着実に感ずる疲労だけが、信頼するに足るものだといふことを、スポーツマンの氏はいづれ
気づくにちがひない。

三島由紀夫石原慎太郎氏」より




429 :吾輩は名無しである:2012/11/13(火) 13:09:10.54
石原氏の出現はひとつの事件であり、いろんな点で象徴的事件であつた。それはヨハネの黙示録
「赤き馬」のやうに、第二の封印を解かれて現はれ、これに乗る者の地より平和を奪ひ取ることと、人をして
互に殺さしむることとを許されたやうに見えた。……しかし事件がをはつたとき、作家としての氏には人生が
残されてゐる。これを生きることの辛さは想像に余りあり、人を刺すための「大いなる剣」は今度は我身を刺す。
読者はこの作品集に、その辛酸の音楽と、一つの代表的青春の凄壮な呻きとを聴くであらう。

三島由紀夫「一つの代表的青春(『石原慎太郎文庫』推薦文)」より







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