三島由紀夫「日本とは何か? 思へば日本ほど若々しい自意識にみち、日本ほど自分は何者かとたえず問ひ詰めてゐる国家はない」
引用元:http://toro.2ch.net/test/read.cgi/book/1309411617
日本とは何か? 思へば日本ほど若々しい自意識にみち、日本ほど自分は何者かとたえず問ひ詰めてゐる国家はない。
今やふたたびその問ひが激しくなり、詰問の調子を帯びて来てゐる。
しかし私は、一九六〇年代は平和主義の偽善があばかれて行つた時代であり、一九七〇年代はあらゆる
ナショナリズムの偽善があばかれて行く時代だと考へる。日本は何か、といふ最終的な答へは、左右の
疑似ナショナリズムが完全に剥離したあとでなければ出ないだらう。
安保賛成も反共も、それ自体では、日本精神と何のかかはりもないことは、沖縄即時奪還も米軍基地反対も、
それ自体では、日本精神とかかはりのない点で同じである。そしてまたそのすべてが、どこかで日本的心情と
馴れ合ひ、ナショナリズムを錦の御旗にしてゐる点でも同格である。「反共」の一語をとつても、私はニューヨークで、
トロツキスト転向者の、祖国喪失者の反共屋をたくさん見たのである。私は自民党の生きる道は、真の
リベラリズムと国際連合中心の国際協調主義への復帰であり、先進工業国における共産党の生きる道は、
すつきりしたインターナショナリズムへの復帰しかないと考へる。真にナショナルなものは、そのいづれにも
本質的に欠けてゐるのである。
三島由紀夫「『国を守る』とは何か」より
新しいインターナショナリズムの胎動―帝国の戦争と地球の私有化に対抗して
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