今年読んだベスト本 2009

2009年に自分が読みこのブログで紹介した本の中から、今年のベスト本を決めたので紹介します。これにより僕自身の趣味ってものが見えてくると思うので、これからこのブログをあなたが読み続けるかどうかの指針にもなりかねないというギャンブル性を含んだエントリー。


てな感じで、僕だけハラハラドキドキしながら書いてるわけですが…(正直、そこまで騒ぐほどのラインナップでも無かったり。どちらかと言えば、在り来たりな部類に入ると思う) まあ趣味が合うか合わないかは別として、どれもが読み応えのある作品だと思うので、気になったら手に取ってもらえると幸いです。


ちなみに今年読んだ本というだけで、今年発売された本ではないのであしからず。それから、ランキングとかではないので並び順には意味はありません。


  • グロテスク

負のエネルギーほとばしる 「グロテスク」


グロテスク〈上〉 (文春文庫)グロテスク〈下〉 (文春文庫)


上で並び順に意味はないとは言ったけど、一応本書が今年のベスト・オブ・ベスト。ほんとにいろんな意味で衝撃を受けました。読後感は正直良いもんじゃない。女性の持っているあらゆる醜い部分が凝縮されていて、読んでいるとその悪意と欺瞞の渦に飲まれてしまって気分が悪くなる人もいることだろう。でも面白い。ある種、劇薬小説です。


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  • 氷の海のガレオン/オルタ

天才の育て方というのも考えていくべきでは?「氷の海のガレオン/オルタ 」


氷の海のガレオン/オルタ (ピュアフル文庫)


読んでみて、実存主義ちびまる子ちゃんという風なイメージを持った(兄弟の構成的にはサザエさんだけど) 実際問題もし自分の子供(僕は独身だけど)がものすごく理解力読解力のある「天才」だったとして、どの年齢までにどのくらいのことを教育するかっていうのも考えさせられるよね。


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本当は人間には何の欲望もないんだよ?「愛と幻想のファシズム」


愛と幻想のファシズム〈上〉 (講談社文庫) 愛と幻想のファシズム〈下〉 (講談社文庫)


舞台が、中南米のデフォルトから端を発した経済・金融不安を抱えた世界なので、まさに今の現実と照らし合わせながら読んだ。本書がバブル絶頂期に書かれていたというのに、今とリンクしているのは驚きの一言。100年に一度の大不況というこの時代に、初めて本書を紐解くというのも何かの縁なのだろうとも思う。


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  • 時間封鎖

「時間封鎖」 は、SF初心者に全力でおすすめ


時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫) 時間封鎖〈下〉 (創元SF文庫)


無限記憶 (創元SF文庫)僕はSFが苦手で、いつも設定を読んでいるうちに挫折してしまうことが多いんだけど、本書はそういうこともなくすごく読みやすかった。小説内の世界は、現代の科学技術より極端に発展してるわけではないので、違和感なく読み進める事ができる。SFというより、ちょっとした社会派小説としても読めなくもないしね。SF初心者にはぴったりだし、秀逸なプロットなのでSF好きの方も納得の作品なんじゃないかなぁ。「時間封鎖」を読み終わったら、続編の「無限記憶」もどうぞ。


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  • 邂逅の森

「邂逅の森」 は、大自然という圧倒的スケール感


邂逅の森 (文春文庫)


マタギという狩猟者集団のことは名前くらいなら聞いたことがあったけど、こんなスゴイ方達だとは思わなかったなぁ。生き物を殺すということは、人間が生きることに繋がっている。非常に考えさせられるテーマだよね。本書は獣の臭いや、森の香りなども感じられるほどの、非常に濃い物語だった。


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  • 天使のナイフ

贖罪というものの難しさ 「天使のナイフ」


天使のナイフ (講談社文庫)


本書は、少年法や刑法41条(十四歳に満たない者の行為は、罰しない)がテーマ。加害者の人権の方が大切にされている中での、被害者の心の葛藤や被害者からすると理不尽な法制度などが描き出されている。それに加えて、贖罪というものの難しさについて考えさせられるものがあった。被害者によっても、贖罪の考え方ってそれぞれ違うんだろうし。それは担当してくれる弁護士にも言えるわけで、それによって涙を呑む人も沢山いるのだろうなぁ…。


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 加害者は、罪の足かせを一生引きずって歩くしかない?「繋がれた明日」


繋がれた明日 (朝日文庫)


本書は、上の「天使のナイフ」と合わせて読みたい1冊。加害者側の視点による物語が展開されてます。加害者側は“罪の深さ”と“罪の生まれた理由”を分けて考えようとするけれど、被害者側は“結果としての罪”しか見ようとしないのが現実。両者絶対に相容れないところに、ものすごい葛藤が描かれている。結構内容が重い小説。


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「“文学少女”と死にたがりの道化」 は、違う意味で泣けました
重くて複雑で辛い心情 「”文学少女”と飢え渇く幽霊」
事件はフジの昼ドラ風 「“文学少女”と繋がれた愚者 」
天使に嫉妬する堕天使 「“文学少女”と穢名の天使」
オール・オア・ナッシング的な思考という悲劇 「“文学少女”と慟哭の巡礼者」
妖怪・巫女・伝説 「“文学少女”と月花を孕く水妖」
今ある世界が、すっかりひっくり返ってしまったような衝撃――「“文学少女” と神に臨む作家」


“文学少女”と死にたがりの道化 (ファミ通文庫) “文学少女”と慟哭の巡礼者 (ファミ通文庫)


ミステリー小説としてもしっかりとした造りになっているし、非常に楽しめたシリーズ。各巻のラスト1ページとかに意味深な言葉が出てきたりして、続きを読まずにはいられなくなる恐れあり。ほんと構成が上手いなと感じました。個人的に一番好きな話は5巻の「“文学少女”と慟哭の巡礼者」。結構ドロドロしてて、かなり重たいお話になっているんだけど、最後かなり感動。良い話すぎるぜ、まったく。


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「爆笑問題のニッポンの教養―ひきこもりでセカイが開く時 精神医学」 を読めばセカイが開くかもしれない


爆笑問題のニッポンの教養―ひきこもりでセカイが開く時 精神医学 (爆笑問題のニッポンの教養 15)


本書は、精神科医斉藤環先生と爆笑問題の二人が番組で対談したものを収録。ひきこもりのこともさることながら、それに関連して、カート・ヴォネガットサリンジャーしょこたんのことなども語られていて、最初から最後までかなり濃い話が続きます。いやぁ〜ほんとお腹一杯になりました。


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  • 翔太と猫のインサイトの夏休み―哲学的諸問題へのいざない

哲学と思想は正反対 「翔太と猫のインサイトの夏休み―哲学的諸問題へのいざない」


翔太と猫のインサイトの夏休み―哲学的諸問題へのいざない (ちくま学芸文庫)


本書の何が面白いって、子供の頃に感じたり考えたりしたことがある事柄を思い出させてくれるところが面白い。今見て感じて生活しているものって現実なのか夢の中の事なのかとか、自分以外はみんなロボットなんじゃないかと思う事とか、こういうのって僕は幼稚園児の時に感じたことがあったので、すごく興味深く読ませてもらうことができた。