読売新聞「本よみうり堂」読書委員が選ぶ2008年の三冊
この本にしびれました!という作品を、読書委員を担当されていた方々が紹介してくれる企画らしい。とりあえず、僕が知ってる方だけ紹介してみたいと思う。
綿矢りさ
〈1〉角田光代著『福袋』(河出書房新社)
〈2〉トルーマン・カポーティ著『ティファニーで朝食を』(新潮社=村上春樹訳)
〈3〉トルストイ著『アンナ・カレーニナ』全4巻(光文社古典新訳文庫=望月哲男訳)
読書委員会のおかげで“できたての新刊を即読む”というぜいたくな本読みができた一年間だった。角田光代著『福袋』、村上春樹訳で再発刊されたトルーマン・カポーティ著『ティファニーで朝食を』、新訳されたトルストイ著『アンナ・カレーニナ』などは、泣きたいけれどあとちょっとで泣けない、なんで本を読むだけでこんな、人生で一番切ない瞬間を水で溶いて飲んだような気持ちになれるんだろうと不思議になる本たちだった。
三浦しをん
〈1〉ヤマシタトモコ著『イルミナシオン』(宙出版)
〈2〉M・J・ローズ著『記憶をベッドに閉じこめて』(MIRA文庫=平江まゆみ訳)
〈3〉渡辺康幸著『自ら育つ力 早稲田駅伝チーム復活への道』(日本能率協会マネジメントセンター)
〈1〉は飄々(ひょうひょう)とした雰囲気のなかに、愛と暴力、ユーモアと痛みが詰まっている。〈2〉はロマンス小説。恋のときめきを味わえるのもさることながら、詩情あふれる文章でひとの心の繊細さを見事に描く。〈3〉はビジネス書。とはいえ、箱根駅伝好きにもおすすめの一冊。指導者の度量と共感力によって、組織は変わるのだなと実感できる。
書評では取りあげることができなかったが、いずれも胸に残る作品だ。
小泉今日子
〈1〉黒川創著『かもめの日』(新潮社)
〈2〉森絵都著『ラン』(理論社)
〈3〉松本幸四郎、松たか子著『父と娘の往復書簡』(文芸春秋)
〈1〉は、静かな空の上から東京の街を、そこに住む登場人物達をクールに見下ろす作者の俯瞰(ふかん)的視線が印象的な小説だった。〈2〉は、「ラン」という表題にスポーツを題材にした小説だと思う人も多いと思うが、一言で表すならばスピリチュアルファンタジー。生きることに実感を見出せない若者に是非読んで欲しい小説。〈3〉は、普通の父と娘の距離感ではなく、2人の俳優の覚悟や孤独を感じ、同業者として身が引き締まる思いだった。
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